社内承継で株式取得資金をどう準備するか|事業承継の資金調達法と注意点blog
社内承継で株式取得資金を検討する場合には、まず経営者本人が会社を将来どうしたいか、誰にどのような形で引き継ぎたいかを整理することが重要です。
そのうえで、会社の将来にわたる事業性、現在の業績および財政状態、承継者候補の意思や適性、株主構成、株式取得に必要な資金などを確認します。
この記事では、社内承継(従業員承継)において、承継者が株式を取得する場合に必要となる資金の考え方と、主な資金調達方法、検討時の注意点を整理します。
社内承継における株式取得資金準備の重要性
社内承継(従業員承継)では、経営を従業員等へ引き継ぐことと、会社の株式を誰が保有するかは分けて考える必要があります。従業員等が次期経営者となったとしても、必ずしも同時にすべての株式を取得しなければならないわけではありません。
一方、承継者が株式を取得する場合には、その取得資金をどのように準備するかが重要な課題となります。時には、株式の価値が非常に高額となることもあり、承継者本人の自己資金だけでは取得が難しい場合があります。
そのため、会社の将来計画や財政状態、承継者本人の資金力などを確認しながら、株式をどの程度取得するのか、いつ取得するのか、その資金をどのように準備するのかを検討する必要があります。
社内承継の基本的な流れと資金ニーズの把握
社内承継では、まず経営者本人の意向を整理し、承継者候補に経営を引き継ぐ意思があるか、経営者としての適性があるかを確認します。そのうえで、経営をどのように引き継ぐのか、株式についても承継者へ移すのか、それとも現オーナーやその家族が保有を続けるのかを検討します。
承継者が株式を取得する場合には、必要となる株式取得資金がどれくらいかを把握します。非上場株式は、税法上、利益・配当・純資産や会社規模等を踏まえ、類似業種比準方式や純資産価額方式などで算定します。また、非上場株式については、税務上の評価額と企業価値評価の違いを理解する必要があります。
株式を売買によって承継する場合には、株式の価格だけでなく、承継者が実際にどの程度の資金を準備できるのか、金融機関から資金調達できるのかなども確認しながら、実現可能な方法を検討します。
株式取得資金の調達手段と特徴
| 調達手段 | 概要 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| 承継者の自己資金 | 承継者本人が保有する現預金等を株式取得に充当 | 借入による返済負担がない | 株式価値が高い場合には、自己資金だけでは取得が難しいことがある |
| 金融機関からの借入 | 承継者等が金融機関から株式取得資金を調達 | 自己資金を超える株式取得資金を準備できる可能性がある | そもそも必要額を借りることができないという与信リスクに加え、返済負担や代表者保証のリスクがある |
| 生命保険の活用 | 生命保険を事業承継時の資金準備に活用 | 契約内容によっては、相続発生時の納税資金や他の相続人への財産配分に活用できる | 保険料負担や契約内容、受取人等を事前に確認する必要がある |
| 役員退職金 | 現経営者の退任時に会社から役員退職金を支給 | 現経営者個人の資金形成につながり、株式承継や相続時の資金計画に活用できる場合がある | 会社から資金が流出するため財政状態への影響を確認する必要がある。また、税務上の損金算入額には一定の限度額があることにも留意が必要 |
| 持株会社の活用 | 持株会社を設立し、株式保有や承継の方法を再構成 | 株主構成やグループ経営の整理に活用できる場合がある | 設立・運営コストが生じるほか、節税目的のみと判定された場合には税務リスクがある |
| M&A(第三者承継) | 第三者へ自社株式を譲渡する | 親族内・社内承継とは異なる会社の将来像を選択でき、企業オーナーが保有する自社株式を現預金化できる | 会社の経営権が第三者へ移るため、経営者本人の意向、従業員や取引先への影響などを確認する必要がある |
資金調達にあたっての判断基準と優先順位
社内承継における株式取得資金は、単に「どこからお金を借りるか」だけを考えるのではなく、会社の将来と承継方針を踏まえて検討することが重要です。
- 経営者本人の意向と承継方針を整理する:会社を誰にどのような形で引き継ぐのかを確認する
- 承継者本人の意思と適性を確認する:経営を引き継ぐ意思があり、承継後の経営を担えるかを確認する
- 株式を誰が保有するかを整理する:承継者が株式を取得するのか、現オーナーやその家族が保有を続けるのかを検討する
- 必要となる株式取得資金と調達可能額を確認する:株式価値、自己資金、金融機関からの借入可能額などを確認する
資金調達手段を選択する際には、会社の財政状態、承継者の資金力、金融機関の与信判断、将来の事業計画、株主構成などを総合的に確認します。
株式取得資金と経営権の関係を整理する
承継者が経営を担う場合でも、すべての株式を一度に取得する必要があるとは限りません。承継者の資金力や現在の株主構成、現オーナーの意向などによっては、段階的に株式を取得したり、現オーナーやその家族が一定の株式を保有し続けたりする方法も考えられます。
一方、所有と経営を分ける場合には、株主と経営者の役割を整理する必要があります。重要な経営判断について誰が決定するのか、承継者にどの程度の権限を委ねるのかなど、承継後のガバナンスについても確認します。
株式取得資金だけを理由に承継方法を決めるのではなく、会社の安定した経営と、承継者が実際に準備できる資金との両面から検討することが重要です。
資金準備でよくある誤解と注意点
よくある誤解の一つに「自社株評価を下げることが優先であり、資金調達は後回しにできる」という考え方があります。しかし、評価額を下げることを目的とした対策が会社の資金繰りや経営判断に悪影響を及ぼす場合もあるため、まず承継方針と必要となる資金を整理したうえで検討することが重要です。
また、持株会社の設立や事業承継税制の利用は万能ではありません。税務上のメリットだけに注目して制度を選択すると、将来の経営の自由度やM&Aなどの選択肢に影響する場合があります。
後継者がまだ決まっていない段階で、後継者候補に少しずつ株式を移してしまうことにも注意が必要です。まず候補者本人の意思や適性を確認し、誰に経営を引き継ぐのかという基本方針を整理したうえで、株式を誰にどのような方法で承継するかを検討します。
東京赤坂相続相談税理士事務所の事業承継支援
社内承継では、承継者本人の意思や適性だけでなく、会社の事業性、株主構成、株式価値、株式取得資金など複数の論点を整理する必要があります。
東京赤坂相続相談税理士事務所では、税務上の自社株評価だけでなく、会社の財政状態や企業価値、承継者の資金調達可能性などを確認しながら、経営者本人の意向と会社の将来像を起点として承継方法を整理します。
特に、自社株の評価額が高く承継者による取得資金の準備が課題となる場合や、社内承継とM&Aなど複数の選択肢を比較したい場合には、それぞれの方法による資金面・税務面への影響を確認しながら検討することが重要です。
企業オーナーによくある相談と判断の分かれ目
社内承継を検討する企業オーナーからは、「従業員に会社を任せたいが株式を買う資金がない」「どの程度の株式を持たせるべきか」「金融機関から資金を借りられるか」「株式をすべて移す必要があるのか」といった相談があります。
| よくある相談 | 起きやすい誤解 | ケース別に確認すること |
|---|---|---|
| 承継者に株式を取得する資金がない | 自己資金がなければ社内承継はできないと考えてしまう | 株式価値、自己資金、金融機関からの借入可能額、取得する株式の割合や時期を確認する |
| 金融機関から借入を考えている | 必要な金額は借りられることを前提に計画してしまう | 承継者本人や会社の信用力、返済可能性、与信判断、代表者保証などを確認する |
| 承継者に経営を任せたい | 経営を任せるなら、すべての株式もすぐに取得させる必要があると考えてしまう | 経営権と株式保有を分けて考え、現オーナーや家族が株式を保有する方法も含めて検討する |
| 後継者がまだ決まっていない | 候補者に少しずつ株式を移しておけば、後から調整できると考えてしまう | まず候補者の意思・適性を確認して後継者を決定し、その後に株式の承継方法を検討する |
| 自社株評価が高い | まず株価を下げることを優先すべきだと考えてしまう | 会社の事業性や財政状態、承継方針、株式取得資金への影響を確認してから税務上の対策を検討する |
株式取得資金の問題は、資金調達だけを切り離して考えるのではなく、「誰に会社を引き継ぐのか」「株式を誰がどの程度の割合保有するのか」「承継者がどの程度の資金を準備できるのか」をあわせて整理することが重要です。
社内承継の株式取得資金について整理したい方へ
社内承継では、承継者が株式を取得する場合の資金準備だけでなく、誰が株式を保有するのか、承継者へどの程度の経営権を持たせるのか、金融機関からの資金調達が可能かなどをあわせて検討する必要があります。会社と承継者の状況に応じた進め方を整理したい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。